ユーコさん勝手におしゃべり

12月5日
 キリリと寒い土曜日の朝、カメの冬眠用のポリバケツのフタを開ける。
 すでに準備は万端、黒土をこねてつくった泥んこに水をそそぎ、周囲に黒土を柔らかく固めた土手も作ってある。ポリバケツの中は、水を張った田んぼのミニチュアだ。
 家でクッションにくるまって仮眠中のカメのごきげんと気温の様子を見ながら一週間が過ぎた。平年より高めだった気温も徐々に下がり、朝晩の冷え込みも始まった。あたたかい日中はカサコソ動いていたカメも、もう出てきて遊んでくれることもない。
 カメをクッションごと外に運び出し、クッションをひらく。移動の気配に目を覚まし、「まだ寝ませんよ」と言うようにゆっくり首を伸ばし手をさし出してくるが、家の中は暖房を入れる時期になり、カメの安眠の邪魔になるので、自然の気温に身をまかせてもらうことにする。
 バケツに入れ、落葉のおふとんを たっぷりかける。染井吉野の紅をメインに、イチョウの黄色や河津桜の橙色、色も形も様々なあれこれの葉をのせて、そっとフタを閉めた。
 しばらくコトコト動く音がして、しんと静かになる。
 こうしてカメは、早咲きのチューリップが開くころまで、深い眠りにつく。
 寒い冬を過ごさず済むのは、ちょっとうらやましい気もするけど、霜柱も雪も見られないのはもったいないかな、とも思う。
 ともあれ、来春、泥水の美容効果でツヤツヤの甲羅と、桜の葉のいいにおいを身にまとったカメとの再会が、今から楽しみだ。
 このところ地震が多い。人間と本は心配だが、カメはあの東日本大震災の時も冬眠中で、しばらくして余震のある中冬眠バケツを掘ってみたが、完璧に眠っていて何も感じていなかった。冬眠中はまるで石と同じになり、少しくらい蹴られてもピクとも動かない。安心してまた埋めた。
 あたたかくなり、店も落ち着いたころ、明るい顔で起きてきたものだ。
 あれから10年、もうすぐ11年になる。変わるものと変わらないものに囲まれて、十年一日の古本屋暮らしは、次の10年に続く、のかな。

11月のユーコさん勝手におしゃべり
それ以前の「おしゃべり」