ユーコさん勝手におしゃべり

6月30日
 2009年が半分すぎた。
 「6月」という月がとぶようにすぎてしまったので「アレヨ」と思っていたら、今年という年もすでに半分たっていたのだ。
 日の長さを見ればよくわかる。今朝梅雨空にむくげの最初のひとつが咲いていた。
 先日、しゃがんで草花を植えこんでいたら、
 「お花屋さんですか」
とうしろから声をかけられた。店を開ける前でまだシャッターもあいていなかった。
 「いいえ、ただ遊んでいるだけです。」 あいまいな笑顔で答えると、
上品に黒の日傘をさしたご婦人は、
 「最近こっちに越してきたんです。まだ慣れてなくて…。
でもここを通るとここに来てよかったなって思うんですよ。癒されます。」
 と言う。
 そのままちょっと立ち話をした。植物では苔とシダが好きだというご婦人に、うちは古本屋だというと、「あ、似合いますね。本と花は似合います。」と大きくほほ笑んだ。
 あれから会っていなけれど、もう、街には慣れたかしら―。

6月13日
 6月に入ってあわただしく時が過ぎている。
 梅雨の気候から本を守るために湿気対策も必要だし、日に日に強くなる日ざしに日除けの補充もして夏に備えている。
 めまぐるしい日々の中でも、今見なければ見られない景色は、今見るしかない。というわけで、梅雨の晴れ間を狙って、潮来と佐原水生植物園へ出かけた。
 利根川沿いをバイクで走る。稲がすくすく育っている。たまに牛がいる。「日本」を感じる。農家の方が田に入り手入れをしている。お米を大切に食べようと思う。
 目に見える情報には限りがあり、知っているべきこともちっとも知らないくせに、「こんなことまでわかってしまっても、どうしたらいいのかわからない」ようなことまで、知識という名で知り得てしまう。
 地に足をつけず、ふわふわ漂っているような知識の中でおぼれてしまわないように、たまには外に出て、地に足のついた歩行をしよう。

6月2日
 本が仕事をしてくれる。
 とはいえ、本は自分からは動いてくれない。本が気持ちよく仕事をしてくれるようにもっていくのは人の仕事だ。
 というわけで、数日前からまた書庫の棚を増やしている。もういっぱいいっぱいだろうと思っていたが、店主がまたまたウルトラCのレイアウトを考え出した。「通り路だったこんなところにも、こうすれば棚が入るのか」と、計画を聞いた時には感心しきりだったが、心を動かすだけで身体を動かさなければ棚は立たない。
 本屋になってから、工具の名前をずいぶん覚えた。新しい棚には、今まで十年以上書庫の奥に眠っていた雑誌バックナンバーが入った。
 本は重く、少々腱鞘炎気味なので、棚に入った書籍のお仕事をするのは、まだ先の話。眠る位置をかえ風を通すだけで、本の寿命がぐっと延びたことを、まずは喜ぼう。

*話は変わって、『古本屋五十年』(ちくま文庫)・『古書肆・弘文荘訪問記-反町茂雄の晩年-』『ある古本屋の生涯-谷中・鶉屋書店と私』(日本古書通信社)のカバー画をかいた青木有花の新作イラストが銀座の[画廊るたん]で8日から13日開催の元展にて展示されます。お近くへお越しの際はお立ち寄りください。

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