ユーコさん勝手におしゃべり

9月26日
 先週末、自転車で荒川土手へゆくと、川べりに彼岸花がみえた。遠目にも、咲き始めだなとわかる ういういしい赤色が並んでいる。
 土手の上から、連休明けの見ごろを想像して通り過ぎたその翌日、台風12号の発生と進路を知った。太平洋上を関東へ向かっているという。
 台風は上陸はせず、太平洋岸をかすめて通り、秋雨前線を刺激した。爾来 雨が続いている。
 週明けには好天が戻ってくる予報である。堀切水辺公園の彼岸花は、それまで待っててくれるだろうか。

9月25日
 93歳一人暮らしの父のところへ、週に二回、県境を越えて通っている。不要不急ではない と確信はしているが、全てが必要、緊急なのかと迫られれば、考え込んでしまう。
 東京から横浜へと通勤圏内の移動だが、コロナ緊急事態宣言以降、ずっとモヤモヤ感があった。
 自らを納得させて、枠にはまり粛々と従っている。自分のことを自分で決められない、そんな状況を、今朝ひらいた新聞紙面がズバリ言い当ててくれた。
 「STAYとか HOMEとか GO TOとか わたしたち犬みたいだよね」(川口晴美 9月25日朝日新聞天声人語掲載) 

 詩のことばがストンと腑に落ちる。状況は変わらないのに、言い得た言葉に、気分が落ち着いた。

9月15日
 店主は、このところ連日何枚も設計図を書いている。どれもステキな庭の土台だ。
 しかし、店横の小庭は不規則な三角形の地面で、何度測ってもきっちりとは納まらない。
 以前から、庭のハード面(造作)は店主、ソフト(植物)は私と役割は決まっているので、私は、まだのんびりとしている。たまに手伝って、手際の悪さにおこられたり あきれられたりするのが、今のところの私の仕事である。

9月12日
 季節はガタガタと音を立てる。
 まるで噛み合わない歯車をむりやり回したように、ガクン、と長い真夏から秋へシフトした。
遅く来て、長く尾をひいたヘンテコリンな夏だった。
 7月の半ばから、店舗の建物の外壁塗装工事がはじまった。足場を組む前に、店横の小庭を整理した。飼いカメのスペースとその周囲だけを確保して、ほとんどの植物を刈り取った。
 私に、20年ぶりに庭のない夏がやってきた。
 生活は変わらない。仕事量も私生活も、いつもと同じように忙しく過ぎていった。いや、店舗の周囲に足場とネットがかかり、工事をしている間に、普段はできない家や店の手入れをするべく、いつも以上に動き回った2か月だった。
 いろんなことがあったのに、この「勝手におしゃべり」の更新は滞っていた。目はいろんなものを見ているのに、手が進まない。不思議には思っていたが、何故だかわからなかった。
 そして、9月8日に、塗装工事が終わり、足場が撤去された。深緑色の新しい外壁は今夏、はじめて直射日光を浴びた。
 夜間の気温がぐっと下がった。寝室で、半袖Tシャツの上から薄い長袖をはおり、足場とネットが建物にかかる前の寝姿になった。来週、仕上げの工事が終われば、また新たに小庭を造ることになる。工事の前に、残したい植物の名前を書いたメモを、もう一度見る。そしてメモ紙に新たな思いつきを綴った。
 庭のない、暑い夏が過ぎてゆくのがわかった。

8月のユーコさん勝手におしゃべり
それ以前の「おしゃべり」