ユーコさん勝手におしゃべり

3月1日
 「ほんとは しまなみ海道を走りたい」
 数年前から店主は瀬戸内のしまなみ海道へ自転車旅に出かけたがっている。何かと先延ばしにしているうちに、コロナウィルスがやってきて、去年・今年はかなわぬ夢となった。
 でも近場でも走るところはいろいろある。店主は暇を見つけては、地図を読み込み、ルートを采配する。
 今日は朝が北風、その後南風の予報だったので、行き先は風に乗って南下と決まった。荒川を海方向へ進み、橋を渡って木場の町へ。 新木場の材木問屋さんのやっている食堂でお弁当を買い、海沿いの公園へ出る。
 背中に海を背負ったヘリポートの前のベンチで、豚汁付きのお弁当をひろげる。海の対岸は千葉方面で葛西臨海公園やディズニーランドが見える。目の前のヘリポートには、昼前とあって、次々とヘリコプターが着陸してきた。
 土手も公園の野辺もホトケノザが花盛りで、ところどころピンクのじゅうたんになっている。
 平日の午前中、行き交う人もほとんどいない公園で、ゆっくり腹ごしらえをして、また自転車に乗る。海沿いのサイクリングロードから橋を渡って、夢の島 若洲海浜公園に入る。この日ヨットハーバーはお休みで、駐車場もコロナで閉鎖中だった。
 左手に海、右手にゴルフ場のサイクリングコースを行くと、海釣り突堤に突き当たり、目の前頭上に巨大なゲートブリッジがあらわれる。
 海を越えた先は羽田空港で、車列の連なるゲートブリッジの上を、飛行機が高度を下げながら飛んでいく。橋の下には貨物船がこちらに向かって航行していて、「まもなく、接岸します」と拡声器の声がした。
 左側は広い海、前方で着々と地面を造っている埋め立て地の右側には、ニョキニョキとビル群が見える。まるで、かつて絵空事だった未来図の景色だ。
 ゲートブリッジは、キスしたい2頭の恐竜が次第に距離を縮めていくように、両端から建て進んでいったのだった。ビル群の向こうにあるスカイツリーは、自分を編み上げるように下からせっせと背を伸ばしていった。どちらも、完成してから10年たった。こんなに作ったのに、まだまだそちこち建設中だ。
 当分、しまなみ海道へは行けそうもない。 でも海はどこまでもつながっているのだし、今日見た景色も時がたてばまた変わり、同じ場所でも新鮮に見ることができる。そう思って海を眺め、水鳥にいやされて帰途につく。
 帰りは天気予報通り、南風が強くなった。電動アシストならぬ風動アシストで、自転車が楽に進む。
 無事に半日45キロの旅を終え、
 「ほぅらね、予定通りだろう」
 と店主が得意気にほほえんだ。

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