ユーコさん勝手におしゃべり

2月11日
 週間天気予報の雨マークが、ことごとく雪に変わって、寒い一週間が過ぎた。明日は、またつかの間 暖かくなるという。
 2月は逃げ月、あっという間に過ぎてゆく。もともと日数も少ないけれど、季節が揺れて、着る物やら、食べ物やら、寒暖の差でかわるものの手配に追われて、いつの間にか半ばになった。
 この分だと、気が付けば月末で、
 「また おひな様を出すのがギリギリになった」 と、今年も言うのだろう。
 実家の隣家から、お庭のきんかんの実をいただいた。毎日1・2コ、小さな太陽のような黄色い実を口に入れる。
 そっと噛むと、春に一歩、近づいた気がする。

2月7日
 立春の声を聞いて、季節がゆらぎ出した。
 ひたすら乾燥した晴れが続いた週間予報にポツポツ雨マークがみえる。
 立春の4日は、4月上旬並みの好天で、店主とハイキングに出かけた。逗子の二子山から森戸川林道をめぐる3時間あまりの道程だった。
 途中何度も、尾がふさふさしたタイワンリスをみかけた。野鳥もリスも春が来るのをことほいでいるようだった。
 二子山山頂へ、私たちと相前後して登った健脚に、店主が年齢を聞くと82歳だという。今は逗子に住んでいるが、千葉の君津の山間で育ち、子どもの頃は炭焼きを手伝ったそうだ。学生時代仲間で方々の山に登ったが、それぞれ別々の会社に就職して、山登りは途絶えていた。それが60を過ぎて皆定年となり再び集まって山歩きを楽しんでいたが、一番若かった一人が急に亡くなり、
 「自分も持病があるから、もうグループでは登れなくなって…」
 と静かに語る。今は健康のために一人でゆっくりと、三浦アルプスと呼ばれる道を歩いている。
 しゃべることで思い出し、聞いてもらうことで心穏やかになることもあるのだろう。
 「じゃあ お先に」 と、さわやかな笑顔で、もう少し休憩を楽しむ私たちを残して下山して行った。
 人の話を引き出すのが上手い店主といると、私一人ならただすれ違ってゆく人の話しを聞くことができる。
 誰にでも歴史がある。大きく時代が変わった昭和の前半の記憶は、今聞いておかないと、生きてきた人とともに、なくなってしまう。
 おにぎりの中の梅干のように、たのしいハイキングの中に、時代の記憶がよいアクセントとなって包み込まれた。
 この好天の翌日は一変してカラカラに乾いた北風が吹いた。そして次の日は雨。こうして、空や海や大地を揺り動かして、季節がかわり、また年がうつってゆく。

1月のユーコさん勝手におしゃべり
それ以前の「おしゃべり」