ユーコさん勝手におしゃべり

2月14日
 2月9日の晩、キリリと冷えた空に満月が大きく明るかった。
その朝、私は店主の運転する車で、横浜の実家に行った。助手席に乗り東京ゲートブリッジの上から左右を見る。左手 千葉方面は、陽を浴びた海面がキラキラと輝き、
 「まるで 磨りガラスを敷き詰めたみたいだな。」 と店主が言う。
 右手の東京側は、遠くの建物までがくっきりと見える。東京タワー、お台場の観覧車はおもちゃのようだ。ニョキニョキはえたビル群の一番手前に、オリンピックのボート会場がある。ビル群の向こう バーンとそびえる富士山は、見えるところすべて雪におおわれまっ白で、山の凹凸の影までがわかる。
 実家の父のところへ寄り、午後、大倉山梅林へ行った。冷たい風にのった梅の香りを、目を閉じて胸いっぱいに楽しむ。隣接する大倉山記念館がオープンデイで、時代を感じる重厚な館内と大倉山精神文化研究所の展示を見学する。
 実家に戻ると、父が、
 「となりの奥さんが、アレ持って来てくれたよ。あの、きいろいやつ 」 と言う。
 「きんかん? オレンジ色の小さいのでしょ。」 と応えて冷蔵庫を見ると、ビニール袋いっぱいにコロコロと小さな太陽があつまっていた。
 お庭からのおすそ分けを ひとつポイっと口に入れる。甘酸っぱくてなつかしいいつもの味がした。
 この日は冬らしい晴天だったが、寒さはこの日までだった。暖冬といわれるだけあって、翌日から もわりと気温が上がった。花は次々咲きだし春の便りを運び始めた。
 好天に誘われて今日は午前中、自転車に乗って江戸川区の行船公園自然動物園へ行った。動物たちも活発に動き回っている。ここでのトピックは、プレーリードッグの赤ちゃん二匹だった。二匹まとめて手のひらに乗るくらい小さい。看板に、「2月12日にはじめて巣穴から外に出ました。」と書いてあるので、おそと体験二日目なのだ。
 巣穴を中心に半径2・30cmの世界を二匹で大冒険している。大人たちは広い地面に散らばってのんびり過ごしているが、彼らは一時もじっとしていない。じっとしていないが、巣穴からは決して離れない。二匹で鼻先を合わせあったり、しっぽを噛み合ったりしてじゃれ、少し離れてはまた慌てて巣穴の前に戻ってくる。保育園の散歩組や親子連れが、声を上げて見ている。
 おおむね大人は「かわいい」と感嘆し、目が釘付けになるのだが、小さい子ほど淡白で、少し見ては、「メーメー(ひつじ)の方へ行こ」 とか、「リクガメがいるよ」 と大人たちに先を促している。自分に近いと、その無邪気さや行動が珍しくないのだろうか。
 ひととおり見て、動物園の隣りの庭園のベンチでお弁当を食べて、昼に店に戻った。ベンチの前の梅の木で、メジロがチーチー鳴きながら蜜を吸っていた。
 ○○園と名付けられるような小さな観光地が、どこもすいていて、ゆったりしている。
 ほんの数か月前、昨秋のラグビーワールドカップの時には、路地にまで、カラフルにいろんな言語があふれていた。そのあとも、普通にどこででも見られた海外からの観光客が今はいない。新型コロナウイルスの影響は、大規模施設だけでなく、小さなところへもあらわれている。
 もとに戻ったとも思えるが、一抹さびしさも感じる。
 今日、沈丁花のさいしょの一輪をみつけた。春の楽しみがまたひとつはじまった。

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