ユーコさん勝手におしゃべり

5月6日
 「そばが食べたいなあ」 と本の梱包用の箱をつくりながら店主が言う。
 「きのう食べたじゃない。お昼に」 と私が言うと、
 「そうじゃなくて、○○屋の、」 と店主が手をとめる。
 山にたくさんの桐の花が咲く光景が目に浮かぶ。
 「遠いね」 と応える。一年半前まで、北関東にある気に入りの蕎麦屋へ年に何度となく出かけていた。
 「遠いな」 と言って、店主はまた仕事に戻った。
 そばを食べたいがために、博物館やらハイキングを折り込んだ旅の計画を立てる。花を見て樹木に癒され、温泉に入って帰る。
 今となっては、遠い別の世界のことのようだ。
 コロナウィルスは衰える気配をみせない。
 それでも、東京にも風薫る五月はやってきた。公園に行けば、スダジイの花の香り、バラの芳香が満ちている。
 荒川土手を自転車でゆけば、椋鳥が小さな蝶を捕まえるところだった。自転車をとめて、椋鳥のハンティングを観察した。野原にてんとう虫の姿もみられるようになった。
 しばらくは足元の自然で心の均衡を保とう。
 いつかまた、大きな山の、広大な湿原の、盛大な自然を身に浴びて、おいしいおそばを、食べたい。

4月のユーコさん勝手におしゃべり
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