ユーコさん勝手におしゃべり

3月29日
 飲み終わった清涼飲料水のペットボトルに水を入れて、クチュクチュと洗う。また水を入れて、2階の窓から下げているプランターの植物に水をやる。それからそのペットボトルにお抹茶を入れて、再び同じ水道水を入れよーく振り、冷蔵庫へ入れる。ルーティーンワークだが、「同じ水で育っているんだな」と気付くと、ありがたい気持ちになる。お花を育て私を生かす水の恵みに感謝する。
 例年より早い桜の開花宣言の後、店横のプランターではチューリップもムスカリも満開になった。しかしその後、気温はぐっと下がり、浮かれてお花見という具合にはいかない。昨日も近所の公園へ行ってはみたが寒風におされて早々に帰ってきた。「三寒四温じゃなくて三寒四寒だね」と言いつつ、持って行ったお弁当を自宅でいただく。
 週末にはあたたかくなるらしいし、寒い方が花持ちがいいから今年は長く様々な花を楽しめる、といい方に考えよう。
 花の下のお弁当は、また来週の楽しみだ。

3月20日
 花につられて旅に出る。そうして春は深まる。
 例年なら日々花壇に手を入れ忙しく過ごす頃だが、今年は、晴れて花を見にゆき浮かれた気分で「種をまかん」と思った翌日には風雨が心を折ることの繰り返しで3月が過ぎた。
 そして今週、目をつぶっている間に一挙に春が押し寄せた。私が種をまかずとも、次々芽は吹き、たちどころにつぼみは出現する。
 昨日お墓参りに行ったお寺の玄関先に大きめの甕が3つおいてあった。蓮の花でも育てるらしいその甕の中からキューキューと小さく高い音が聞こえる。
 見ると、大きな茶色のカエルたちが重なり、おたまじゃくしをつくらんと皆それぞれに交尾の最中であった。可愛らしい声はそこから発せられるらしい。
 まさに世は春、なのであった。
 帰宅し、満開のパンジーやビオラの中から、下を向いて咲いていたり、プランター後方の見えない位置で開いている花を摘んだ。小皿に水を入れて食卓にのせる。外では沈丁花の香りに負けて感じなかったが、家に入れると甘いよい香りがする。

  こんな老木になっても
   春だけは忘れないんだ
  御覧よ まあ、紅梅だよ    -山村暮鳥-

3月3日
 昨日は晴天だった。午前中車で用を足しに出かけ、昼前に店に戻った。堀切橋を渡り地元に入った最初の交差点の赤信号でとまる。車のすぐ左手の歩道に大輪の紅白まだらのつばきが咲いていた。ふと目をやると、目線の先にメジロがいる。ちょうど目の高さの椿の枝にとまったメジロは、つぼみがひらいたばかりでチューリップカップのような形をした花の中にくちばしから体中スッポリ入りこんで蜜を吸った。満足して姿勢をのばし、またつぼみカップの中へ吸い込まれる。
 「目がカメラだったらなぁ、」と悔やまれる。こんな日差しで、こんなに間近で彼に会うことは、もうないはずだから。とりあえずシャッターを押すように両目でしっかり大きなまばたきをして、目を信号に戻した。
 ディーゼル車規制が功を奏したか、昨夏のガソリン高で走る車の数が減ったからか、最近普通の道端で様々な野鳥を見かけるようになった。
 野鳥は生まれてきても最初の冬を越せずに死んでしまうものも多いと聞く。今日はまた寒さが戻り、午後には雪が降るらしい。
 春爛漫の頃まで、もう少しだからがんばって、と、脳内フィルムに写しこんだ昨日の鳥と不特定多数の鳥たちに向かって、心の中で言ってみる。

2月のユーコさん勝手におしゃべり
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