ユーコさん勝手におしゃべり

4月30日
 「あげは蝶だ!」
 買い物に出た街角の植え込みにあげは蝶がとまっていた。一人で歩いていたのに思わず声が出た。
 心が揺れる。昨日プランターの花に水をやった時、あぶら虫をみつけて、園芸用の殺虫スプレーを手にしたのだ。同じ花でも冬の間は虫がいないので、今年初めての殺虫だ。そろそろありんこの姿も見かけるようになった。蝶の来る庭はあこがれだ。虫の動きは見ていて飽きない。蜜を吸いに来るのは蜂でも蝿でも歓迎だ。蝶の幼虫にも寛容な方だと思う。…でも、葉をみんな食べられちゃうのはかなわない。そして、どうしてあぶら虫には寛容になれないのか。
 「偽善者め!」
 と自分を責める季節が来た。
 それもこれも、みんなひっくるめて、春の喜びの一部だ。

4月26日
 花々が、まるでゴールデンウィークに合わせたかのように、次々開花している。街はどこも花盛りだ。バラのつぼみもふくらんで、早いものはもう花びらをひろげている。
 今朝、店横のプランターにすずらんのつぼみをみつけた。派手に陽に向かっている花たちの根元で、静かに純白の準備をしていた。
 数年前に思いがけずお客様から送っていただいたドイツすずらんの苗は、毎年店回りのどこかしらへ移動を続けながら命をつないでいる。寒冷地で育つ身ゆえ、昨夏の猛暑で夏を越せたか心配だったが、北向きの店舗正面のプランターに居たのが幸いしたか、かれんなつぼみを持った。
 こうして、自分が土に埋めたものとの再会に、驚きと幸福を楽しめるとすると、忘れっぽいのも長所と言える。

4月19日
 今春は上天気が続かず、降れば大雨、吹けば大風となる。それでも順調に季節が進んでくれることを、切に願う。
 4月15日、晴天。ちょうど本の発送のない日と晴天が重なる幸運に恵まれた。地図を北上して春のおさらいをする。東京ではすっかり終わってしまった桜も北関東ではまだまだ健在。まずはひたちなか海浜公園へ進路をとる。
 入口にイチョウの木がある。丸裸のものが多い中で一本、まさに芽の出る瞬間、という姿の木があった。芽先が若緑色になっていて、よく見るとひとつの芽の中にぎっしり葉が詰まっている。ほんの小さな一葉一葉が皆イチョウの葉の形をしている。真ん中の割れたイチョウ葉のミニチュアが、「さぁ これから出るぞ」とひしめきあっている。これを見ただけで今日の収穫は充分と感じさせる若い力があった。
 貸自転車で園内を回る。すいせんにチューリップ、はらはら舞う桜の花びら、一番好きな季節のリピートだ。
 公園を出て茨城から栃木に入り、市貝の芝桜を見た。途中沿道には白い梨の花と桃色の桃の花がたくさん咲いていて、収穫を待つ麦畑と豊かなコントラストをつくる。
 旅に出た翌日、近所の神社のイチョウの木を確認した。見慣れたイチョウの葉もあんなふうに出てきたのかと思うといとおしい。
 来週末には金精峠も開通するし、来月は奥日光へ出かけよう。春の波状攻撃に身をさらし、多くの元気をもらおう。

4月11日
 春の嵐がゆき去って、とじていた目をあけると、八重桜とつつじが満開だった。
 春は急激に加速度をましてきた。
 よい日ざしが照ったので冬眠用の日陰の棚に入れていた亀の水槽を降ろしてペットの亀を掘り出した。泥だらけの体を水で洗ってやると、気持ちよく手足と首をのばしてさっそくひなたぼっこをした。
 店の前に木のラティスを出してペンキを塗っていると、私の後ろを、お母さんに手をひかれた幼い姉弟が通った。弟が、「ねぇ、アレ何塗ってるんだろうね」と聞くと、姉が、「緑色を塗っているんだよ。」と答えていた。
 「おお…」と声をあげそうになった。弟の聞きたかったことと、たぶん違った答えだったが、弟は一応納得した。姉は、「わからない」ということばを発することなく即答できて、姉のメンツを守った。のだろうと、思う。振り向いて幼い二人の姿を確認したい衝動に駆られたが、そうはせず、一人笑顔になって深緑色のペンキを塗り続けた。
 初夏に向けて少し店の横の園芸コーナーに手を入れた。土や水の持つ力に驚かされたり感謝したり、また励ましたり、いい季節になってきた。

4月4日
 今朝もご近所の桜の咲く公園へ自転車で向かう。毎日行っても尽きることなく、桜が植わっている公園はある。昨日は都電に乗って飛鳥山へ行った。今日は荒川土手に面した小菅西公園へ足を向けた。しだれ桜に囲まれて染井吉野を見られるところがあり、たんぽぽの地面に持参のシートを敷いてしばし空を見た。公園をひとまわりしていると、目の前を一羽、鳩が歩いている。ついていっても逃げない。少し早足でついていっても少し早足になるだけで飛び立たないので、そのまま鳩のあとを行くと、道からはずれてボケの花の咲くところへつれていってくれた。見慣れた朱の花と共に純白のボケの花が咲く木があり、薄桃の木もある美しい一角だった。私はそこに立ち止まり、鳩はそのまま歩いて行った。
 ほんのひととき、花の中にしゃがんで、
 「くさらず 怒らず、花のように黙って散って また来年、静かに花をもちなさい。」と、神様に出会ったような気持ちになった。

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