ユーコさん勝手におしゃべり

6月26日
 梅雨らしいしとしと雨の降る中、近所の温泉施設へ行く。ゆっくりと露天風呂に浸かり、ゆっくりと意味もないことを考える。何も建設的なことが思い浮かばない時は、そんな自分に落ち込まず、「よし、今日はパフェを食べに行こう!」と気合を入れて湯舟を立つ。
 帰宅途中、最寄りの堀切菖蒲園駅で、ガード下のつばめの巣を観察。つばめの子は巣からこぼれ落ちそうに育っている。大きい三羽と小さめの一羽。でも「ココに巣があります」というフン落下注意の貼り紙には、五羽のヒナがかえりましたと書いてある。もう一羽ちっちゃいちゃんがいるらしい。「がんばれよー」と口の中で小さくエールをおくる。
 つばめの巣といえば、数日前同じ場所で、お母さんが小学生の子どもにつばめの巣を指さし見せていた。
 「ホラ、かわいいでしょ」と声をかけるが、子どもの興味はその時そこにはなく、
 「あそこに頭が出てるでしょ」「動くとわかるんだけどな」 と、お母さんが働きかけても、「わかんない、見えない」とつれない。何とか情操教育に結び付けようとする親の意図は子どもを素通りしているようだった。
 ものごとのタイミングは難しい。
 先日、店の前を三輪車に乗った子とそのご両親が通った。三輪車はイスの背もたれ部分が長く延びて、親が手に持って、押してあげたりコントロールできるようになっている。子どもは、
 「ねぇ、ボク 速いでしょ」
と得意気だ。本当は親が押してあげているスピードなのだが、子どもは自分の走行が優れていると思い込んで、新車の三輪車をのりこなせる自分に大満足だった。親御さんは「別に…」という反応に見受けられた。
 もっとあおってもいいのに。
 こんな時は二度とこないのだから、もっと楽しんで子どもをその気にさせてもいいのにな、ともったいなく感じた。
 ブランコが大きく揺れただけで、ぐるんぐるんと鉄棒を二回続けて前回りしただけで、まるで世界を掴みとったようにうれしかった、そんな気分はもう味わえないんだと気付くのは、あの子のご両親よりもっと上の年代になってからなのでしょう。
 ものごとを植えつけるのはタイミングが難しい。
 そして、他人のなら見えるのに、なぜ、自分のタイミングは、見えないのだろう。
 後日譚:翌27日、つばめの子の飛行練習をみた。朝の陽射しを浴びて、つばめがグライダーのように高架線路の橋脚の周りをぐるっとまわった。昨日心配した巣に見えない一羽は、先に飛べるようになって散歩に出ていたのかもしれないと思い、心が軽くなった。
  30日の午後6時、つばめ一家全羽巣立ちました、と駅前の貼り紙が告げていた。おめでとう、つばめ。あとには、空の巣とたくさんのフンだけが、残っていた。


6月10日
 うれしいものは むくげのつぼみ。今年もまた盛夏がやってくると約束してくれる。
 衣替えの季節、花壇でがんばっている春の花もそろそろ役目を終えようとしている。(今年の春のなごりの花壇はこんなかんじ)10日ほど前から一日一鉢くらいずつ、夏の花と取り替えたり場所を動かしたりしている。今年は急にイメージチェンジせず、ゆったりと春から夏に移行する作戦だ。しかし作戦をたてるのも実行するのも一人なので、その密かな遂行には気付く人もいないかと思う。
 先日、店番していたら、見知らぬ奥様から
 「あの…外のアーチで咲いている花は何というのでしょう」
と声をかけられた。「こういう方のアーチ」と両手で二つあるうちの一台のローズアーチの形を示す。
 「ああ、やまほろしですね。」 と答えた。
 「やまほろしっていうんですか」と納得し、「実はね」とカバンの口を開けた。
 「あんまりかわいらしい花なので、私もあんな風にしようと思って、同じ花の苗を二つ買ってきたんですけど、名前を忘れてしまって」とおっしゃる。カバンの中にはやまほろしの苗が並んでいた。
 「そうですか。丈夫ですからうまくいきますよ。
 うちのも買った次の年はあまり花をつけなかったので、来年は咲かないこともあるかもしれません。でもきっと大丈夫ですから。大きくなりますよ。」
 半分はうれしい気持で奥様に、そして後半の付け加えは、自分に言った。
 数年前に買った山紫陽花が、今年もつぼみをつけなかったのだ。「こんな花が咲きます」という出来上がり図の写真だけを見て買ったので、まだ咲いた姿を見たことがない。でも、来年に期待しよう。気が向いてくれて忘れた頃に最初の花をつけるかもしれないから。
 袖振り合うも多生の縁。話したことのない方と言葉を交わすことで、自分の内心にあったものを再確認することも、ある。

6月7日
 6月6日は晴天。朝、満開の堀切菖蒲園へ散歩に行く。菖蒲祭の間は朝8時から開園している。8時台はさすがに人影もまばらでゆっくりできる。一人で園内を眺めていたおば様と少し立ち話をする。「菖蒲にはちょっと晴れすぎですね」とおっしゃる。同じように晴天だった前日に、カメラを持ってうちのお店に来た方も、「いい写真とれました?」と聞いたら、「イヤ、菖蒲を撮るには天気がよすぎる」と言われた。そういえば、去年だったか、霧吹きを持ってカメラを構えるカメラマン氏を見かけた。それぞれの植物に合う雲行きがあるらしい。
 今朝は曇天。カルガモ親子を見に向島百花園へ足を伸ばす。ゆっくり一周園内を見る。45種のあじさいが植えられているそうで、入口で紫陽花鑑賞地図をいただいた。
 百花園の野鳥は警戒心がない。小道を歩いていると雀が私のすぐ目の前の道におりたち、とってきた子虫をついばんでいる。急に近づいて驚かさないように、食事の終わるまで道を譲ってしばし待つ。この時間のゆとりが、「散歩」を実感させてくれる。
 カルガモを見ていたら、急に薄暗くなった。通り雨を、大きく葉を拡げたかしわの木の下でやり過ごす。見上げるとかしわの葉につつまれて、柏餅になった気分だ。
 萩は竹製のトンネルの半分くらいまでたけが伸びている。今年も萩のトンネルが楽しみだ。次に来るのは、9月の終わりくらいかな。
 今日は、菖蒲も一息ついただろう。

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