『ユーコさん勝手におしゃべり』 バックナンバー目次

9月25日
 花壇がさびしい。ここ数年で一番のさびしさだ。天候の不順のせいか私のずぼらのせいか、花が足りない。では早々にパンジーの苗を植えようと思って花屋へ行ったが、まだ入荷していなかった。今年は少し遅くなるらしい。自分の花壇がだめなら、人の花壇を見て心をうるおそうと思って、堀切菖蒲園へ行ったが何もなかった。夏でなし、秋でなし、今は難しい時らしい。毎年楽しみにしている萩のトンネルは、背丈も十分伸び、咲くには咲いていたが、何だかボサボサで、トンネルの中に入っても「わぁ 夢の中みたい」の世界にならない。先日の台風とそれに続く雨のせいだろうか。じっと目をつぶって、10月になるのを待つしかないか。
 秋晴れの空、一面のコスモス、草原の風―。目をつぶって想像すれば早く本当の秋が来るかしら。誰か私をさらってつれてって―。(と、もう○○年若ければいいたいところだ。)

9月15日
 店主がいそいそとホームセンターへ行く。頭には、「ペッカン」と点灯電球マークがついている。店に入るドアの取っ手の老朽化に際して、「ぜひ革装の本をドアノブにしたい」と言っていたのだ。そのアイディアが思いついたらしい。書棚から革装三方金の本を4冊取り出して、買って来た部品で何やら工作している。そして一晩たち、本日開店時には、完成していた。この世のどこにもないドアノブ、「どこか取材に来ないかなぁ」とは本人の弁。

9月13日
 9月11日はニューヨーク同時多発テロのあった日だった。あれから2年という。「まだ2年しかたっていないのか」というのが第一印象だった。それはつまり、2年の間に2つも戦争をしたのか、ということだ。手をつくし熟考した結果というには2年は短い。
 8月から、広島長崎の日、終戦の日、と様々な戦争を扱った報道を見た。
 戦争を始める。「戦争を終わらせるため」と大義を述べて戦争を続ける。その底に「被害者になるくらいなら、加害者になるほうがまし」という声がきこえる。まじめな身なりでスマートな論戦をはる退役軍人の言っていることが「被害者になるくらいなら、加害者になるほうがまし」ときこえた。

9月12日
 以前に一度 「なりたい自分はほめる人」と書いたことがある。昨日、第1回全日本学生フォーミュラ大会を見に富士スピードウェイへ行ってきた。学生がフォーミュラカーを設計自作し、各種性能を競い合うというもの。参加17チーム中16チームは大学で、1チームだけ高専が出場している。その都立航空高専チームを応援に行く。他はみな大学生大学院生という中でひときわ若いチームメンバーは、16歳から20歳。がんばる人を見るのは楽しい。炎天のサーキットのコンクリ道を、さし入れの15本のペットボトル飲料をかついで歩くのさえ楽しい。自然に顔がほころんでくる。音とにおいと汗と真剣な顔顔顔。見て歩いているうちに、どこのチームもベストを出してほしいと思えてくる。年齢のことなんか考えていたこともすっかり忘れる。出場者たちの中にある20歳ほどの年の差は競技の中にはない。技術の巧拙はあっても真摯な気持ちは皆同じ。口で「すごいね」と言わなくても、応援している人がいると伝えていくことが、彼らをほめていることになるだろう。がんばれ若者!
 先日くだんの高専学食に、ふしぎなメニューがあるのを知った。「半ライスの大盛」 ありえないと思って、学生に聞くと
「うん、食券だからね」と言う。 納得。お値段の安い半ライスの食券を買って、「大盛で」と言ってみる学生さんと、拒否しない心意気の学食の方がいるわけだ。もちろん非公式なことで大きな声ではいえないが、ライスの券を出しつつ「大目でお願いします」とかいろいろ手はあるらしい。よく減る腹と薄いサイフを持つ学生と、黙ってそれを応援する人のちょっとしたコミュニケーションを見せてもらった感じがする。応援してもらっているというのは、ほめてもらっているのと同じ力がある、と思う。社会に出るとなかなかそうはいかないものなぁ。
(追記:3日間の日程を終えて、航空高専は、総合成績11位、アクセレーション(加速性能)部門で2位でした。総合1位上智大学はじめ、1~3位までの各校マシンは10月の東京モーターショーでご覧になれます。)

9月7日
 パッとしない天気の続いた8月が過ぎ、9月に入るとガゼン気温が上がって好天が続いている。すると突然店主が言う。
「夏が戻って来たから避暑に行かねば! 明日行こう。」
 コーヒーセットと折りたたみ自転車、敷物と本とタオルを車に積んで、翌日早朝には奥日光にいる。「発作的人生だ」とも思うが、なかなかいいアイディアなので、翌日分の仕事は、夜を徹してせっせと敢行。頭に浮かぶのは、中禅寺湖畔のおいしいパン屋さんの焼きたてパン。そのためにちゃんとコーヒーセットを持参するのだ。買ったら湯の湖まで上がって湖畔でお湯を沸かし朝食。その日一日、時間が気になるのは、売り切れ御免のパン屋さんの開店時間にそこに行くことだけ。あとはフリータイム。「時間」のくくりから開放される。
 時間といえば、先日母と浅草に行ったときのことを思い出す。せっかくの浅草行きなので、尾張屋の天ぷらそばを母に食べさせてあげようと、11:00に浅草の駅で待ち合わせる。少しぶらついて、11:25に尾張屋さんの前に行く。11時半にのれんがかかりお店の人が引き戸を開けてくれる。名物の天ぷらそばを待ちながら話しをする。
 「1時から寄席が始まるから、お昼を食べて仲見世を歩いていけば丁度いいね。」
 注文品が来て、食べている間にみるみる席が埋まってゆく。「開店と同時に来てよかったね。12時近くなると外で待つようだよ。時間調べといてよかった。」と言うと、母が言う。
 「田舎の親戚が、たまにこっちに来ると東京は忙しくて疲れるって言うんだよ。時間に追われるようだって。田舎にいると時計なんかめったに見ないから。」
 私はちょっとびっくりして、それから母の出身地の景色を思い出す。広くてきれいな日本海と、一面緑の田んぼ、沢水の流れる山。朝になったら起きる、おなかがすいたら食べる、夜になったら寝る暮らし。11:30に行列の店が開店時間だからと、そこまでせっせと時間を逆算して半日をすごしたことに気付かされた。食事を食べ終え好天の外を歩きながら、学生時代に友人が言っていたことばを思い出した。
 「駅で何よりわからないのは、2・3分待てば次が来る山手線に乗るために必死で走ってる人がたくさんいることだよ。オレの実家の方みたいに電車が1時間とか2時間に1本っていうんならわかるけどよ。それでもあんなに走んないぜ。」
 「そうか、数分待てば必ず次が来るのか」と、あの時も初めて発見したことのように私はちょっとびっくりした。まるで、自分がかまえていたのと違う方向から剣がとんできたかのようだった。
 そして、それはふと思い出す印象深いことばではあるけれど、今でも私はよく駅の階段を駆け上がったり駆け下りたりしている。「ああ、もう1分早く家を出ればよかった」なんて思いながら。

9月5日
 パソコンを買った。仕事で3年使ったノートパソコンが、「重い重い、もう働きたくない」と言い出したので、少々休暇を与えることにした。新しいものを買うのはワクワクすることだ。だが、買ったその日から様々なデータを移さねばならないことを考えると、物体であるパソコンに脅迫されているような気もして気が重い。何しろ技術は日進月歩、数日でも寝かせておいたら古くなる。今春に家人が買ったデスクトップは無線LANをつなぐのにLANカードが必要だったのに、今回買ったのはLANシステムは内蔵でカードはいらないんだと。いったいどこで通信しているのやら、すぐつながっちゃう。とりあえず全て必要なものは移して、運行開始。やる前は気が遠くなると思っても、やってしまえば何ということもない。
 「へへ、ちょろいちょろい、イザ、おニューでお仕事」と思ってキーボードへ手をやると、IQの高い天才児童もしょせんお子様だった。
 旧型とはいえ本屋に就職して3年のパソコン氏は、すっかり仕事に慣れていた。特に出版社の名前はよく知っていた。「しんちょう」と打っても「慎重」なんていわずに「新潮」を出してくれる。「てんごく」と打ち込めば「天極」だ(天極少シミとかに使う)。 「天国」なんて本屋にはいらない。「はっそう」は「発送」。新人君は何度も最初の変換で「発想」と出して来たが、本は発想しない。あげくに「びほん」を「微本」とやってくれて「微妙な本なんていらないよ」と嘆かれた。
 「まぁ、何でも手早くできて潜在能力はあるようなので、一日も早く仕事に慣れるように」と上司気取りで新人パソコンに言い渡すのだった。

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